東京地方裁判所 昭和43年(むのイ)491号 決定 1968年7月30日
主文
陶山健一に対する昭和二五年東京都公安条例第四四号集会集団行進及び集団示威運動に関する条例違反被疑事件につき、東京地方検察庁検察官堀部玉夫が昭和四三年七月二六日した別紙記載の接見等に関する指定は、これを取り消す。
理由
一請求の趣旨と理由
請求人の準抗告申立書記載のとおりであるから、これを引用する。
二判断
当裁判所の事実調の結果によると、被疑者陶山健一は、東京都公安条例違反被疑事件で、昭和四三年七月二四日逮捕され、同月二六日付の検察官の請求にもとづき同月二七日勾留されたこと、同月二六日付で東京地方検察庁検察官堀部玉夫が別紙のとおりの接見等に関する指定をしたことが明らかである。
かかる一般的指定も、その性質上刑訴三九条三項の処分として準抗告による取消の対象になりうると解する。
そこで、刑訴法三九条の趣旨について考えるに、右規定は、被疑者とその弁護人との接見交通の自由を原則的に保障し、そのうえで、捜査のため事実上の具体的支障があるときにかぎり、例外的に、その支障のある時間を除いて、接見交通の可能な日時、場所、時間を具体的に指定することにより、右接見交通の自由を制限することを許し、右接見交通権と捜査の必要性との調和をはかつているものである(右の合理的理由があるから同法三九条三項は憲法三四条に反しない。)と解する。
とろが、本件このようにいわゆる一般的指定がされると、指定書は被疑者および監獄(または代用監献)の主務者に交付されて、被疑者と弁護人の接見等が事実上原則として制限されることになり、刑訴法三九条の趣旨に反し、弁護権の行側を不当に制限することになるので許されないものと解する。
よつて、本件の一般的指定は違法として取り消すべく、刑訴法四三〇条、四三二条、四二六条二項により主文のとお決定する。(片岡正彦)